今すぐ実践、ビデオ通話で「より自信がある人」に見える・聞こえるために
TLDR オンライン会議はリモートコミュニケーションに欠かせない便利なツールですが、気づかないうちに、同僚やクライアント、その他のステークホルダーからの評価や信頼を下げてしまっている可能性はないでしょうか。カメラの角度、アイコンタクト、レーザーポインターの使い方、ジェスチャーといった小さな要素が、オンライン上での印象を大きく左右してしまうことがあります。本記事では、オンライン会議で毎日のように起きている「もったいない瞬間」を4つ取り上げ、それぞれをどう改善すべきかを具体的に解説します。
オンライン会議に参加していて、「この人、額しか見えていないな」と感じたことはありませんか?あるいは、視線がずっと部屋の隅に向いていたり、逆に顔が画面に近すぎて、毛穴まで見えそうな距離だったり。
多くのビジネスパーソンは、同僚やクライアント、その他の重要なステークホルダーに良い印象を与えたいと考えています。しかし、画面越しに自分がどう見えているかについては、意外なほど意識が抜けてしまうことがあります。
同じ部屋にいないからといって、相手に見えていないわけではありません。
本記事では、オンライン会議やプレゼンの場で毎日のように起きている「もったいない瞬間」を4つご紹介します。それは、あなたの評価、自信、そして本来なら得られるはずの信頼を、知らないうちに損なっているかもしれない瞬間です。
そして、英語が第一言語ではない場合でも、英語の問題ではありません。
なぜ「顔」は思っている以上に重要なのか
4つの「もったいない瞬間」に入る前に、オンライン会議に対する見方が少し変わるかもしれない話をさせてください。
私たちは赤ちゃんの頃、誰かの腕に抱かれながら、じっと顔を見上げて過ごすしていました。その顔、こちらを見返す目、それがすべてでした。つながりであり、安心であり、愛そのものです。
人間の脳は、顔を見つけようとするようにできています。 顔を読み取り、その相手を信頼できるか、影響を受けてもいいかを瞬時に判断します。
そして私たちは、実際の顔だけでなく、周囲のものの中にも「顔らしきもの」を見つけてしまいます。それほどまでに、脳は常に顔を探し続けているのです。これを「*顔パレイドリア(face pareidolia)」と呼びます。
私は研修で、よくある例として、私自身がキッチンで見つけたものを紹介するのですが、半分に切った瞬間に“顔”が現れたパプリカがあります。穴の形がちょうど目のように見え、中央には口のような空間があり、種が歯のように並んでいました。それは、まるで叫んでいるか笑っているかのような顔でした。
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つまり、ビデオ通話においてあなたが持つ最も強力なコミュニケーションツールは「顔」なのです。言葉ではありません。
そしてその顔が不自然な位置にあったり、表情が読み取れなかったりすると、それが意識的であれ無意識であれ、人は確実にそれに気がつきます。
オンラインでは、非言語コミュニケーションが特に目立ちます。すべての情報が、あの小さなスクリーンの“枠”の中に集約されるからです。だからこそ、そこへの集中度も高くなります。
もしこの非言語コミュニケーションをうまく活かせていないとしたら、それはまさに「もったいない」ことです。大きな機会を無駄にしていることになります。
それでは、ここから4つの「もったいない瞬間」と、その改善方法を見ていきましょう。
もったいない瞬間①:顔の位置
画面上で、自分の顔の“理想的な位置”を確認したことはありますか?
基本は、頭がフレームの中央あたりにあり、頭上に少し余白がある状態で、肩が見えていることです。
なぜ肩まで見せるのかというと、人は無意識のうちに「姿勢」からその人の自信を読み取っているからです。顔だけが映っている状態だと、その情報の一部が欠けてしまいます。
普段の対面コミュニケーションでも、相手の“顔だけ”を見ているわけではありませんよね。首や肩も自然と視界に入っているはずです。
また、照明についても少し触れておきましょう。リングライトを知っているかもしれませんが、一般的なビジネス会議であれば、そこまで凝った設備は必要ありません。
大切なのは、顔がきちんと見えて、表情が相手に伝わることです。
もし背後に窓がある場合、逆光でシルエットのように見えてしまうことがありますが、少し不気味な印象を与えてしまうこともあります。
できれば光源は背後ではなく、前方にある状態にするのが理想です。
もったいない瞬間②:アイコンタクト
アイコンタクトの重要性については、すでに多くの人が聞いたことがあるかもしれません。ただ、その「適切なアイコンタクトの量」は文化によっても異なります。
私が日本で対面のプレゼンテーション研修を始めた頃、参加者に「話し手からのアイコンタクトは、もっとあったほうがいいですか?もっと少ない方がいいですか?」と尋ねていました。ほとんどの場合、答えは「もっとあった方がいい 」でした。一方で、ごく稀にですが、シャイな方の中には、あまり見つめられると落ち着かないと感じる方もいました。その場合は、視線を他の参加者に分散させることで対応していました。
グローバルビジネスにおいて、アイコンタクトは自信の表れであり、つながり・敬意・信頼を生み出す重要な要素です。
しかしオンラインでは、私たちは自然と画面上の相手の顔を見てしまいます。ところがそれをすると、カメラの位置によっては、相手から見ると視線が下や横にずれているように見えてしまいます。その結果、相手とのつながりが弱くなってしまうのです。
解決策はシンプルです。画面ではなくカメラを見ること。
特に重要なポイントを伝えるときや、相手としっかりつながりたいときには、カメラを見ることを意識してください。もちろん、相手の非言語コミュニケーションを確認したり、スライドをチェックしたりするために画面を見るのは問題ありません。ただし、話している時間の大部分はカメラを見ることが理想です。
このアドバイスをコーチングのクライアントに伝えると、ほぼ必ずやりにくいと言われます。そして、自分だけがおかしいのではと感じる人もいますが、それは違います。むしろ自然な反応です。私たちは“小さな緑の点”に向かって話すことに慣れていないからです。
そこで役に立つのが、とてもシンプルな方法です。カメラの横にスマイルマーク付きの付箋(Post-it)を貼るのです。
シンプルですが、驚くほど効果があります。
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カカメラの位置も、必ず自分の目の高さに合わせるようにしましょう。
下に向いて話してしまうと、相手を見下ろしているような印象になり、不快感を与えることがあります。逆に、見上げる角度になると、自信が弱く見えてしまいます。
ノートパソコンを使っている場合は、箱や本の上に置いて高さを調整するとよいでしょう。ちなみに私は在宅勤務のとき、アイロン台の高さ調整機能をかなり重宝しています。
ここまで、最初の2つの「もったいない瞬間」——顔の位置とアイコンタクトについて見てきました。
ここで、私たちの脳がいかに「対面でのコミュニケーション」を前提に進化してきたか、ということに、少しずつ気づいてくるはずです。
ビデオ通話はその“代替手段”です。とても便利な代替手段ではありますが、それでもあくまで代替でしかありません。
だからこそ、オンラインでは「どう見えるか」「どう伝わるか」を、これまで以上に意識することが大切なのです。
こうした課題を解決してくれるテクノロジー
先日、私はとても興味深いテクノロジーを試す機会がありました。それが tonari(となり) です。
日本語で「となり」という意味ですが、その名前の通り、本当に“すぐ隣の部屋にいる”ような感覚をつくるテクノロジーです。
とても素晴らしいネーミングですよね。まるで別の部屋がそのまま隣に存在しているような感覚になります。
この仕組みは、床から天井まで広がる大型ディスプレイによって“ポータル”のような空間を作り出し、そこにカメラが組み込まれています。その結果、相手がまるで目の前に立っているかのように感じられ、自然なコミュニケーションが可能になります。
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もったいない瞬間③:スライドと恐怖のレーザーポインター
私は6年間、東京大学のエグゼクティブ・マネジメント・プログラムで教鞭を執っていました。そのプログラム・ディレクターである横山禎徳氏(元マッキンゼーのマネージング・ディレクター)には、ひとつの“口ぐせ”のようなこだわりがありました。
彼はいつも私に、「ヘレン、それだけは絶対にやらせないで」と言っていました。
彼が言う「それ」とは、多くの人が対面プレゼンでやりがちな、そしてオンラインではさらに簡単にやってしまうあの行為・・・
そう、「レーザーポインター」です。
複雑なグラフが画面に表示され、その上を赤い点が忙しく動き回る様子を想像してみてください。
プレゼンターはどこを指しているのか分かっています。しかし、聞き手はそうではありません。その赤い点の動きは、むしろ見る人の認知負荷を高め、中にはめまいを感じる人さえいます。少なくとも、信頼性を高める要素にはまったくなりません。むしろ逆効果になることもあります。
レーザーポインターは、猫を楽しませるには最高のツールなんですけどね。
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真面目な話に戻ると、スライドはそもそも「ポインターがなくても理解できる」ように設計すべきです。そして、聴き手の視線はあなたの言葉で導くべきです。
たとえば:
「ご覧の通り、左側から見ていくと…」
「右側のグラフは〜を示しています」
このようにシンプルで明確なナビゲーションがあれば、聞き手は迷いません。あなたの声は、揺れ動く赤い点よりもずっと信頼できる“ポインター”なのです。
もったいない瞬間④:手の使い方
ここまで、頭と肩の位置、アイコンタクト、そしてスライドとレーザーポインターについて見てきました。
では最後に、オンラインで話すときに見落とされがちなポイント、「手の使い方」を見ていきましょう。
オンラインでは、「どうせ手なんて見えていない」と思ってしまうかもしれません。でも実は、手は大きな武器になります。
二つ前の記事でも触れたように、私たちの脳は原始的な時代から、環境の中の“動き”に注意を向けるようにできています。 動きは危険のサインだった可能性があるからです。
オンラインでは手全体を大きく見せる必要はありません。しかし、たとえ小さな動きでも、画面の中に“わずかな変化”があるだけで、聞き手の集中力は維持されやすくなります。
ジェスチャーの量は、相手や伝えたいエネルギーによって調整することができます。
たとえば、フォーマルなプレゼンで、年次の高い日本人のオーディエンスに向けて話す場合は、やや抑えめに。一方で、海外チームの若いメンバーとの活発なミーティングであれば、もう少し表現豊かにしてもいいでしょう。
ただし、まったく動きがない状態、いわゆる“静止した顔だけの状態”は、注意を引きつける効果がほとんどありません。むしろ、集中を維持することを難しくしてしまいます。
そして、相手が集中できず、内容に引き込まれなければ、あなたの印象が強く残ることも少なくなってしまうのです。
4つの「もったいない瞬間」とその改善方法
- 顔の位置:頭がフレームの中央あたりに来るようにし、肩も映す。そして光源は前方から当てること。
- アイコンタクト:カメラを目線の高さに合わせ、重要なポイントを伝えるときはカメラを見る。スマイル付きの付箋(post-it)も効果的。
- レーザーポインター:スライドと明確な言葉で聞き手を導く。レーザーポインターは、猫のために取っておきましょう。
- 手の使い方:手は使うこと。動きがあることで、画面越しでも相手の集中力は維持されやすくなります。
これらはどれも、特別な時間やお金を必要とするものではありません。必要なのは「意識」と「少し試してみようという姿勢」だけです。
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よくある質問
Q. なぜカメラの映りで自信がないように見えてしまうのですか?
カメラの角度や位置は、オンラインでの印象に想像以上の影響を与えます。カメラが低すぎたり高すぎたり、顔がフレームの中央から外れていると、たとえ話している内容が優れていても、自信や信頼性が弱く見えてしまうことがあります。対策はシンプルです。頭がフレームの中央に来るようにし、肩も映るようにし、カメラを目線の高さに合わせることです。
Q. ビデオ会議でアイコンタクトを取るにはどうすればいいですか?
ビデオ会議でのアイコンタクトとは、画面上の相手の顔を見ることではなく、カメラを見ることです。人間は顔を見るようにできているため、最初は不自然に感じます。しかし画面を見ていると、カメラ位置の関係で相手からは「下や横を向いている」ように見えてしまいます。役立つ工夫として、カメラの横にスマイル付きの付箋(Post-it)を貼っておくと、視線の目印になります。
Q. オンラインでプレゼンするときにレーザーポインターは使うべきですか?
いいえ、避けるべきです。レーザーポインターはオンラインプレゼンで最もよくある「信頼性を下げる行動」のひとつです。赤い点が速く動くことで聞き手の認知負荷が増し、場合によっては見づらさや不快感につながることもあります。その代わりに、スライドはポインターなしでも理解できるように設計し、言葉で誘導します。
例:
「ご覧の通り左側から…」
「右側のグラフは〜を示しています」。
Q. ジェスチャーはビデオ会議で重要ですか?
はい、多くの人が思っている以上に重要です。人間の脳は動きに注意を向けるようにできているため、画面内で見える手の動きは、相手の集中力を維持するのに役立ちます。手全体を見せる必要はありませんが、画面内にわずかな動きがあるだけでも効果があります。逆に、完全に動きのない“静止した話し手”は、集中を維持しづらくさせます。
Q. mottainai momentとは何ですか?
「もったいない(mottainai)」は、日本語で「無駄になってしまって残念だ」という感覚を表す言葉です。本来は価値があるもの、活かせるものが、うまく使われずに無駄になってしまうことを惜しむ気持ちです。コミュニケーション・コーチの岩田ヘレンによると、「mottainai moment」とは、自分のスキルや専門性を十分に伝えきれず、価値ある機会を逃してしまっている瞬間のことを指します。ただし一度それに気づけば、改善はそれほど難しくありません。
Q. グローバルビジネスにおいて英語力はどのくらい重要ですか?
英語力は、多くの人が考えているほど決定的な要素ではありません。必要なのは、基本的な語彙と文法で自分のメッセージを伝えられるレベルです。その上で、より大きな影響を持つのは語学力そのものよりも、非言語コミュニケーションです。つまり、難しい単語や完璧な文法を追求するよりも、オンラインでの見え方や話し方を改善する方が、はるかに効果的な場合が多いのです。。
この記事は、岩田ヘレン著『英語の仕事術(Eigo no Shigoto-jutsu)』出版10周年を記念した5回シリーズの第3回です。シリーズの全記事はこちら:
第1回:上手な聞き方、尋ね方
第2回:英語プレゼンテーション