相手に「聞いてもらえた」と感じてもらい、本当に理解するための質問の仕方
TLDR 職場でのコミュニケーションの行き違いは、無駄な時間、締め切りの遅れ、そして不要なストレスなど、私たちが思っている以上に大きなコストを生み出しています。しかし、これを大きく変える2つのスキルがあります:意図をもって聴くこと、そして、適切な質問をすることです。この記事では、なぜ本当の意味でのリスニングが難しいのか、何がそれを妨げているのか、そしてすぐに実践できるシンプルな方法をご紹介します。
仕事で、明確に指示を出したのに、まったく違うものが返ってきたことはありませんか?
あるいは、会議でうなずきながら聞いていたのに、終わってみると「結局何が合意されたのかよくわからない」と感じたことは?
もし思い当たるなら、それはあなただけではありません。
職場でのコミュニケーションの行き違いは、無駄な時間、締め切りの遅れ、そして不要なストレスの大きな原因のひとつです。特に、異文化・異言語・異なる世代が関わる環境ではなおさらです。
私は日本で35年以上、ビジネスパーソンと仕事をしてきて、この問題を何度も目にしてきました。そして自分自身も経験してきました。
この記事では、なぜこうしたことが起きるのか、そして何よりも「どうすればよいのか」をお伝えします。
コミュニケーションの幻想
よく知られている言葉があります(ジョージ・バーナード・ショーの言葉とされることが多いものです):
「コミュニケーションにおける最大の問題は、それが成立したという幻想である。」
自分は相手が理解したと思っている。相手も自分が理解したと思っている。
しかし、「言ったこと」と「聞いたこと」の間で、意味が失われてしまうのです。
以前、アメリカ人の同僚が、明らかにいら立ちながら私にこう言いました。
「ヘレン、どうしてなのかわからないんだ。やるべきことは伝えているのに、1週間後にまったく違うものが返ってくる」
経験ありませんか?
指示を出す側でも、受ける側でも、「意図」と「理解」の間のギャップは現実に存在し、そして大きなコストを生みます。
「聞く」と「聴く」の違い:漢字が示すもの
この二つは、シンプルに聞こえますが、実はとても深い違いがあります。
聞く(hearing)は受動的です。自動的に起こります。耳が機能していれば、音は自然に入ってきます。
聴く(listening)は違います。意図的で、能動的です。「聴こう」とする意思が必要です。そして、純粋な好奇心も役立ちます。耳だけでなく、頭で、そしてある意味では心で聴くのです。
日本語の「聴く」という漢字には「心」が含まれていますよね。
あな他は 職場で、同僚の話を「聞いて」いますか?それとも本当に「聴いて」いますか?
なぜ本当のリスニングは難しいのか
本当の意味でのリスニングは、思っている以上に難しいものです。
その理由には、外的要因と内的要因があります。
外的要因
私たちの脳は「変化」に気づくようにできています。
原始時代には、その本能が命を守っていました。森の中で突然静かになったら、それは危険のサインでした。
現代のオフィスやオンライン会議では、この仕組みが逆に働きます。通知音、 人の動き、室温の変化、こうしたものに、注意が絶えず引き寄せられます。
興味深いことに、人によってこれに対処する力は異なります。
私が家族と東京の京急線の踏切の近くに住んでいたとき、私は遮断機の「カンカンカン」という音にすぐに慣れてしまいました。
しかし夫は、数ヶ月後、海外出張から戻ってきた私に、引っ越そうと言うほど、その音に耐えられなかったのです。
内的要因
内的な要因もあります。
心配事、価値観、思い込み、感情、これらすべてが、私たちがどのように聴くか(あるいは聴かないか)に影響します。
誰かの話を聞いているときに、まったく別のことを考えていて聞き逃したことはありませんか?
あるいは、自分の背景や経験によって、本来の意図とは違う解釈をしてしまったことはありませんか?
ブタとドラえもん:思い込みの話
コミュニケーションのエクササイズを行ったときの話です。
参加者は2人1組で背中合わせに座り、一人が簡単な絵を描き、それを言葉で説明します。もう一人はそれを見ることなく、聞いた内容をもとに絵を描きます。質問はできません。
タイ出身の参加者は、「これはブタです」と言いました。それから、丸い顔、丸い目など、細かく説明しました。
エクササイズが終わり、日本人のパートナーが見せてくれた絵は、なんとドラえもんでした。
どこかで「ブタ」という言葉を聞き逃し、「丸い顔、丸い目」という情報から、自分の中のイメージで補ってしまったのです。
このような行き違いは、職場で毎日のように起きています。ただし、通常は笑い話では済みません。
私のアメリカ人の同僚が経験したように、1週間の仕事がまったく違う方向に進んでしまうこともあります。
本当にもったいないことです。
理解するために聴いていますか?それとも答えるために?
『7つの習慣』の著者スティーブン・コヴィーはこう述べています。
「ほとんどの人は理解するために聞くのではなく、答えるために聞いている。」
欧米のビジネス文化では、これがよく見られます。会議中に相手の話を聞いていない人、すでに次に自分が言うことを考えている人がいるのです。
以前の同僚がこんな話をしてくれました。
ある人が会議の冒頭で、「こんにちは。皆さん、お変わりありませんか。」と聞いたところ、クライアントが、「妻が交通事故に遭ったと連絡がありまして…」と答えたのです。
するとその人は、 「そうですか。では本日は〜のフォローアップで…」と続けたため、同僚は慌ててそれを止めなければなりませんでした。
これは極端な例ですが、実話です。
そして私たちは、その小さなバージョンを日々繰り返しているのです。
日本でよく見られる別の課題
コヴィーの指摘は欧米の課題を表していますが、日本では少し違う形で現れます。
多くの人は、理解するためではなく、調和を保つために聴いているのです。
日本のビジネスパーソンは、忍耐強く、丁寧に話を聞くと評価されることが多いですが、それも事実です。
しかし、忍耐や丁寧さと、理解は同じではありません。
失礼に思われたくない、質問して相手を煩わせたくない、その結果、本当は理解していないのに、うなずいてしまうことがあります。
これは私自身の経験でもあります。イギリスでも同様に、人に迷惑をかけない文化があります。
2016年のTEDxトークでもこの話をしましたが、ある日同僚に、「ヘレンは、私の話に興味がないように感じる。全く質問してくれないんだもん」と言われ、とても驚いたことがあります。
私は、自分は 忍耐強く、相手の話を遮らない、良い聞き手だと思っていました。
でもそのとき、質問することがどれほど重要かに気づきました。
理解を確認するためだけでなく、相手に関心を示し、しっかり向き合っていることを伝えるためにも、質問をすることは重要なのです。
質問する勇気
英語にはこんなことわざがあります。
「質問する人は5分間は愚かに見えるが、質問しない人は一生愚かなままである。」
そして日本語では、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥 と言いますよね。
その教えは、文化を超えて共通しています。とはいえ、質問することは、いつも簡単にできるものではありません。
私が関わっている多くのプロフェッショナルが、ためらってしまう理由は2つあります。
- 慣れていない ー 多くの従来型の教育環境では、生徒は教師の話を聞き、質問はあまりしません。これまで練習したことがないことは、違和感ややりにくさを感じるものです。
- 英語に自信がない ー 自分の考えを十分に表現できないのではないか、誤解されるのではないかと不安に感じます。その結果、沈黙を選んでしまいます。。
ここでお伝えしたいのは、質問することの不快感は、ほとんどの場合、質問しないことによるコストよりも小さいということです。
一瞬の不確かさか、それとも1週間、間違った方向に進んでしまう仕事か。小さなリスクか、それとも損なわれた信頼か、どちらを選ぶべきかは明らかでしょう。
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
では、実際にはどうすればよいのでしょうか?オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを適切に使い分けることで、大きな違いが生まれます。
クローズドクエスチョンは、YesかNoで答えられる質問です。オープンクエスチョンは、相手により深く考えさせ、より十分に答えることを促す質問です。
例を見てみましょう。あなたは新しいプロジェクトについてチームメンバーにブリーフィングしたところです。
「理解しましたか?」と聞くことができます。これはクローズドクエスチョンです。ほとんどの人は、理解していなくても「はい」と答えます。
あるいは、「最初のステップは何をする予定ですか?」と聞くこともできます。これはオープンクエスチョンです。これで、本当に理解しているかどうかを実際に確認することができます。
ここで、覚えておく価値のあるオープンクエスチョンをいくつか紹介します:
- “How are you planning to approach this?”「どのように進める予定ですか?」
- “What might make this challenging?”「何がこれを難しくしそうですか?」
- “What would be helpful to know at this stage?”「この段階で何を知っておくと役に立ちますか?」
確認したいときには:
- “So we’re agreed on the deadline—is that right?”「締め切りはこれで合意していますよね?」
- “Is there anything that might stop you getting started?”「スタートするのを妨げるものは何かありますか?」
小さな違いですが、それによって、会話のあとに共通理解を持ってその場を離れることができるのか、それとも単なる理解の“幻想”だけで終わるのかが大きく変わります。
振り返り:あなたはどんな聞き手ですか?
もし思い込みの力を直接体験したいなら、このワークをチームで行ってみてください。
2人に背中合わせで座ってもらい、一人が簡単な絵を描き、それを説明します。
もう一人は、それを見ずに、聞いた内容だけで絵を描きます。質問はしてはいけません。
所要時間は5分で、結果はほとんどの場合とても驚くものになります。時には面白く、そして常に気づきを与えてくれます。
そして、日本語の漢字「聴」に立ち返ってください。
心で聴く。好奇心をもって聴く。
ただ返答するためではなく、そして場の調和を保つためだけでもなく、本当に理解しようとする純粋な意図をもって聴くことです。
それが、人から信頼される聞き手のあり方です。そしてグローバルな職場において、そのような信頼こそがすべてです。
意味のある質問をするための無料学習ツール
リスニング力と会議の成果の両方を向上させる最も効果的な方法のひとつは、より多くの質問をすることです。特に、戦略的な質問です。
「25 Questions for More Productive Meetings」には、英語と日本語で書かれた、会議をより効果的にリードしたり参加したりするための実践的な25の質問に加えて、まだ質問することが自然に感じられない段階でも始められる5つの簡単なステップが含まれています。
さらに深く進みたい方へ
もしこの記事が心に響き、コミュニケーションのコーチングやトレーニングが、あなたやあなたのチームをどのようにサポートできるのかを探ってみたいと思われたなら、ぜひご連絡いただければ嬉しいです。
次の記事をお見逃しなく
この記事は、小学館から出版した私の著書『英語の仕事術』の出版10周年を記念した5回シリーズの第2回です。今後は、英語プレゼンテーション、電話会議、グローバル会議をリードする、コンフリクトのトピックを取り上げていきます。
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よくある質問
Q. 聞くことと聴くことの違いは何ですか?
聞くこと(hearing)は受動的で自動的です。耳が機能している限り、音は入り、それを聞くことができます。聴くこと(listening)は能動的で意図的です。単に音を受け取るだけでなく、好奇心と本当に理解しようとする意志が必要です。
Q. なぜグローバルチームのプロフェッショナルは誤解をしやすいのですか?
誤解は通常、語彙や文法の問題ではなく、思い込みによって起こります。「理解した」と思った瞬間に確認をやめてしまうのです。「言われたこと」と「理解されたこと」の間のギャップこそが、ほとんどの職場の問題の始まりです。
Q. なぜ日本のプロフェッショナルは職場で質問を避けることが多いのですか?
主な理由は2つあります。従来型の教育環境では、質問よりも聞くことが重視されてきたこと、そして多くの人が自分の英語力に自信がなく、明確に質問できないと感じていることです。どちらも理解できることですが、質問しないことのコストは、質問することの不快感よりもほとんどの場合大きくなります。
Q. ビジネスコミュニケーションにおけるオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンとは何ですか?
クローズドクエスチョンはYes/Noで答えられる質問で、事実確認に役立ちます。オープンクエスチョンはより十分な回答を引き出す質問で、理解を確認するために不可欠です。「理解しましたか?」はクローズドです。「最初のステップは何をする予定ですか?」はオープンであり、はるかに多くの情報を引き出します。
Q. 国際的な会議でリスニングスキルを向上させるにはどうすればよいですか?
自分がどのモードにいるかに注意してください。聞いているだけなのか、聴こうとしているのか。返答するために待っているのか、それとも本当に理解しようとしているのか。より多くのオープンクエスチョンを使ってください。そして、たった一つの意識の変化が、あらゆる会話の質を変える可能性があることを忘れないでください。