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対立への5つの対応戦略と、その選び方

TLDR 職場での対立は、ストレスを生み、仕事の成果にも悪影響を及ぼします。しかし、多くの人は「対立が起きたら、いつも同じ反応」をしてしまいがちです。積極的に向き合う人もいれば、できるだけ避けようとする人もいます。でも、その対応がすべての場面でうまくいくとは限りません。大切なのは、状況に応じて最適な対応を選ぶこと。この記事では、対立への代表的な5つの対応戦略と、「今の状況にはどれが最も効果的か」を判断するためのシンプルな考え方をご紹介します。
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職場で意見が対立したことはありませんか?プロジェクトの進め方について考えが違ったり、優先順位がぶつかったり、性格が合わなかったり。

職場での対立は、目に見える形で起こることもあれば、水面下で進むこともあります。どちらの場合も、適切に対処しなければ、不満やストレスが積み重なってしまいます。

この記事では、Thomas-Kilmann Conflict Mode Instrumentをもとに、職場での対立に対応するための5つの実践的な戦略をご紹介します。

取り上げる内容は、次のとおりです。

  • 多くの人が議題作成でやってしまう失敗と、それが会議の時間をムダにしてしまう理由
  • 参加人数に関係なく、効果的な会議に必要な6つの役割
  • 日本の職場でも「違う意見」を安心して言える場をつくる方法
  • 合意形成を難しくしてしまう、たった一つのよくあるミスとその防ぎ方

対立が起こる3つの原因

対立への5つの対応戦略をご紹介する前に、まずは職場で対立が起こる主な原因を3つ見ていきましょう。

1. ダイバーシティ

ダイバーシティは、新しいアイデアやイノベーションを生み出すうえで欠かせないものとして広く認識されています。一方で、多様なバックグラウンドを持つ人が集まることで、「これが当たり前」という感覚が人によって異なり、前提とする考え方にも違いが生まれます。その結果、対立が起こりやすくなることもあります。

2. リモートワーク

私は2016年に出版した『英語の仕事術』で、コロナ禍で在宅勤務が一般的になる前から、リモートワークは対立を増やす可能性があることを書いていました。リモートで仕事をすると、お互いに何をしているのかが見えにくく、信頼関係を築くことが難しくなります。また、メールやチャットでのやり取りでは、相手の意図や感情のトーンが伝わりにくく、誤解が生じやすくなります。こうしたすれ違いが、不必要な対立につながることも少なくありません。

3. 業務量の増加

ここ数年で、あなたの仕事量は増えましたか。それとも減りましたか。私が多くの方に伺うと、「以前より増えた」と答える方がほとんどです。AIによって効率化が進むと言われていますが、実際には仕事が増えたと感じている人は少なくありません。そして、仕事量が増えると、多くの場合ストレスも増えます。ストレスが高まると、視野が狭くなり、相手の立場から物事を見ることが難しくなります。その結果、対立が起こりやすくなるのです。

対立への5つの対応戦略

増え続ける職場での対立に対応するために、ここでは5つの戦略をご紹介します。

これは、対立心理学で広く知られているThomas-Kilmann Conflict Mode Instrumentをもとにしたものです。

今回は、それぞれの戦略を動物で表しています。動物に置き換えることで、イメージしやすく、覚えやすくなるからです。

私は企業向けの対立対応ワークショップでもこの方法を使っています。参加者からは、「共通の言葉で対立について話せるようになった」「堅苦しくならずに、率直な話し合いができる」と好評です。

では、5つの動物をご紹介します。読みながら、「自分はどのタイプに近いだろう?」と考えてみてください。

1. サメ = 闘う(Win-Lose)

自分の意見を強く主張し、自分が正しいと確信しています。簡単には譲りません。勝つ人と負ける人がはっきりする「Win-Lose」のアプローチです。

2. ハチ = 協力する(Win-Win)

ハチは、みんなにとって最善の解決策を見つけるために協力します。お互いが納得できる結果を目指す「Win-Win」のアプローチです。

3. イヌ = 受け入れる(Lose-Win)

大きな目でしっぽを振るイヌを思い浮かべてください。イヌは、相手の言うことやすることをそのまま受け入れます。自分が譲り、相手を優先する「Lose-Win」のアプローチです。

4. ダチョウ = 避ける(Lose-Lose)

多くの国では、ダチョウは危険を感じると頭を砂の中に隠す、というイメージがあります。「自分から見えなければ、相手からも見えない=見なかったことにしよう」、というたとえです。日本ではあまり知られておらず、ダチョウが本当に頭を砂に埋めるわけでもありません。これは古代ローマ時代までさかのぼる誤解だと言われています。

5. キツネ = 妥協する(50-50)

イギリスに住む私の両親の庭には、ときどきキツネがやって来ます。そして、お隣ではニワトリを飼っています。キツネは卵を1つずつ持ち去ります。キツネは賢い動物だとよく言われ、「ニワトリが生き残ってまた卵を産めるように、あえて卵を全部は取らない」と誰かに聞いたことがあります。でも、これも実は俗説でした。それでも、「お互いが少し得をし、少し譲る」という妥協のイメージとしては、わかりやすい例です。

あなたは対立が起きたとき、普段どのように対応していますか。サメのように闘いますか。ハチのように協力しますか。イヌのように受け入れますか。ダチョウのように避けますか。それとも、キツネのように妥協しますか。

では、この5つの中で最も良い対応はどれでしょうか。

実は、どれも正解になり得ます。状況によって最適な対応は変わるからです。

私がこれを初めて学んだときは、「なるほど!」と大きな気づきがありました。

その理由を、次のマトリクスでご説明します。

対立時の戦略の選び方

縦軸はタスクの重要度、横軸は人間関係の重要度を表しています。

タスクは非常に重要でも、人間関係はそれほど重要でない場合は、サメになって自分の意見を貫くのが最適な戦略です。

タスクも人間関係も重要であれば、ハチのように協力して、お互いにとって最善の解決策を目指すのが最適です。

タスクはそれほど重要ではない一方で、人間関係が重要であれば、イヌのように相手の意見を受け入れるのがよいでしょう。

そして、タスクも人間関係もどちらも重要でない場合は、ダチョウのように対立を避けるのが最適な戦略です。頭を砂の中に埋めるように!

では、中央にいるキツネはどうでしょうか。妥協はどんなときに有効なのでしょうか。妥協が最適なのは、本当は協力してWin-Winを目指したいけれど、時間的な制約があり、そこまでたどり着けない場合です。お互いが望むものをすべて手に入れることはできなくても、それぞれが少しずつ譲り合い、少しずつ得る。それが50-50の妥協です。

協力が、いつも最適とは限らない理由

私が初めてこのマトリクスを学んだときは、本当に驚きました。

私の「いつもの反応」は、協力することです。会社員だった頃は、どんな対立の場面でも、Win-Winの解決策を見つけようとしていました。まさに、忙しく飛び回るハチのようだったのです。誰もが満足する結果を目指して、必要以上に時間とエネルギーを注いでいました。

でも、40代になってようやく気づきました。すべての人と、すべての場面で、良い関係を維持しようとするのは、現実的でもなければ、賢い選択でもないということに。バーンアウトを2回も経験したのも、無理はありません。

幸い、今では、自分はハチタイプであることを理解したうえで、状況に応じてほかの戦略も選べるようになりました。

あなたはどうでしょうか。

今回ご紹介した5つの戦略を参考に、ぜひ新しいアプローチも試してみてください。職場での対立に、より効果的に対応できるようになるはずです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、ステキで楽しい一日を!



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よくある質問

Q. 職場で対立が起こる主な原因は何ですか?

現在の職場で対立が増えている主な要因は、ダイバーシティ、リモートワーク、業務量の増加の3つです。多様なバックグラウンドを持つ人が集まると、「当たり前」の捉え方が異なるため、誤解が生じやすくなります。また、リモートワークでは信頼関係を築きにくく、メールやチャットでは相手の意図や感情が伝わりにくいため、すれ違いが起こりがちです。さらに、業務量が増えてストレスが高まると、相手の立場で考える余裕がなくなり、対立につながりやすくなります。

Q. 職場での対立に対応する5つの戦略とは何ですか?

Thomas-Kilmann Conflict Mode Instrumentをもとにした5つの戦略があります。

  • サメ:闘う(Fight)
  • ハチ:協力する(Collaborate)
  • イヌ:受け入れる(Accept)
  • ダチョウ:避ける(Avoid)
  • キツネ:妥協する(Compromise)

どの戦略にも適した場面があり、「これが常に正解」という対応はありません。

Q. どの対立対応戦略を選べばよいですか?

まず、次の2つの質問をしてみてください。

  • タスクはどれくらい重要ですか?
  • 人間関係はどれくらい重要ですか?

タスクも人間関係も重要であれば「協力する」が最適です。タスクの重要度が高ければ「闘う」、人間関係のほうが重要であれば「受け入れる」を選びます。どちらも重要でなければ「避ける」が適しています。また、本当は協力したいものの時間が足りない場合は、「妥協する」が現実的な選択になります。

Q. 協力することが、いつも最善の対応ですか?

いいえ。協力は、タスクと人間関係の両方が重要な場合には効果的ですが、多くの時間とエネルギーが必要です。状況を問わず、すべての対立でWin-Winを目指そうとすると、疲弊し、バーンアウトにつながる可能性もあります。

Q. Thomas-Kilmann Conflict Mode Instrumentとは何ですか?

Thomas-Kilmann Conflict Mode Instrument(TKI)は、対立心理学で広く活用されている対立対応モデルです。この記事でご紹介した動物を使ったフレームワークは、TKIをもとに、5つの戦略をより覚えやすく、実際の職場で活用しやすいようにアレンジしたものです。

Q. 日本のグローバル企業で職場の対立が増えているのはなぜですか?

日本のグローバル企業では、ダイバーシティの進展、リモートワークや国境を越えたチームの拡大、そして業務量の増加により、誤解や摩擦が生じる場面が増えています。こうした変化は2016年頃から見られていましたが、コロナ禍を経てさらに加速しています。

この記事は、岩田ヘレン著『英語の仕事術(Eigo no Shigoto-jutsu)』出版10周年を記念した5回シリーズの第5回です。シリーズの全記事はこちら:

第1回: 上手な聞き方、尋ね方

第2回:英語プレゼンテーション

第3回:電話会議

第4回:グローバル会議をリードする